料理修行のUP TO DATE (15)
「ね。もう11時過ぎてるよ。」
準備万端整って、お客様をお迎えするばかりになった体育館は、ミョーな静けさが漂っていた。時計をみるとすでに始まって30分が経つというのに、お客がぜーんぜん現れない。まわりのお店の人たちも手持ち無沙汰。お隣同士で世間話なんかしてる人達もいる。
オースティンとは言え、12月の、それもひと気のない体育館は寒い。やる気満々の私はシェフコートの下は半袖Tシャツだけで、所在なく座っていると足元から寒さがじんじん襲ってくる。12時を回る頃になってようやくポツリ、ポツリと人がやって来た。が、どーみても関係者の友人って感じの人ばかり。みんな自分の知り合いのところで足を止めてしまって、なかなか私のお店の前までたどり着いてくれない。
「お腹、、、空いたね。」隣に座っている友人がポツリと用意したクラッカーを見てつぶやいた。
、、そういえばもうランチタイムだもんなぁ。
「What's going on? (調子はどう?)」
気づくと、この大邸宅の持ち主で、バザーの主催者でもあるSusan が立っていた。知り合いも少ない私たちのブースは閑散とした体育館の中でも、際立って閑古鳥が鳴いているように見えたのだろう。
「ね。試食してもいい?」
「は、はい。どうぞ。」
まずはディップをクラッカーに乗せて一口。
「それは?」
「これは野菜やきのこ、チキンを炊き込んだライスです。」
後ろの炊飯器から温かい御飯をよそって差し出す。
「あ、デザートもいいな。これティラミスでしょ?」と、こちらもご賞味。旺盛な食欲である。
「あーおいしかった。ごちそうさま♪ (にっこり)」
あ、あれ? お腹空いてただけだったの? と私が思ったその時だった。
くるりと踵を返すと、体育館のど真ん中に立った彼女。
「みなさーん。今日は来て頂いて本当にありがとうございます。実はね。そこのブースにシェフが作ったお料理が試食できるコーナーがあるんです。ちょっと感動的おいしさよ。ぜひお立ち寄り下さいね。」
買い物やおしゃべりに興じていた体育館中の人の注意が私に集まり、そして三々五々と彼らがこちらに向かってくる。
「Good luck!」
Susanがティラミスのクリームを唇の端につけたまま、後ろの方で私にむかってウインクしたのが見えた。
Grazie Mille (ありがとう) Susan !! (続く)
